Happy Obento Life – おべんとう初心者の備忘録

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今年からおべんとう作りを始めた。以前からおべんとうを作る生活に憧れていた。小さい空間におかずを詰めて、美しい小宇宙を作り上げる日本の文化がとても好きだ。たかだか30回のおべんとう作りではあるが、初心者ながらもこれまで気づいた点、学んだ点を備忘録としてまとめておく。

おべんとう箱

大館工芸社の曲げわっぱ(ひな弁当)を使い始めた。定番は「小判弁当」という一段のおべんとう箱だが、実物を何種類か見て二段の「ひな弁当」を選んだ。(L 130mm, W 110mm, H 95mm, 容量は一段目・二段目ともに 360ml)このおべんとう箱が優れている点は、おべんとうの構成と分量をほとんど悩まなくてよいことだと思う。一段目にごはんをふわっと盛る。ほぼごはん一膳分である。二段目に、おかず四品を入れるとちょうどいい。

おべんとう作りを長続きさせるコツは、「家ごはんの延長」という割り切りと、構成のパターン化だ。

家ごはんの延長

毎回ハレのおべんとうは作れない。ケのおべんとうでありながら、彩がよくて食欲がわくおかず。飽きがこない、家の味。作る立場・食べる立場で折り合えるのが、こういうところだと思う。

構成のパターン化

毎回おかずを考えるのはなかなか大変だ。構成をパターン化すると、そのパターンの中で考えるので随分と楽になる。わたしは、1. 玉子焼、2. 魚か肉、3. 野菜(きんぴらかオイル蒸し、または両方)、4. 野菜か練り物か果物(空いたスペースを埋める一品。なるべく野菜)、というパターンにしている。

一段 360ml という容量は、箱だけ見るととても小さく思えるが、実際に詰めるとかなりの分量が入る。毎回、玉子焼はほぼ玉子一個分、魚は大ぶりの切り身一切れ(肉であれば 120〜130gぐらい)を入れているが、これに野菜のおかず一品をかなりの分量入れても少しスペースが余る。作る立場としてはちょっと辛い時もあって、ごはん+おかず三品でも成り立つおべんとう箱が欲しいと思っている。

おかずの組み立て

家ごはんの延長と考えれば、似たようなおかずが続いても気にならない。シンプルな味付けなら毎回続いても飽きがこない。そんな訳で、玉子焼と、野菜のきんぴらは定番になっている。

玉子焼

玉子料理は火加減、温度、成形の観点でとても難しいと思う。でも、おべんとうにはどうしても玉子焼が入っていて欲しかった。okatte仲間の金垣智香子さん(料理教室 indigo)が昨年秋おべんとう講座を開催され、玉子焼の実習レッスンがあったのでそこで教えてもらった。これまで30回玉子焼を焼いたが、今でも上手く焼ける日、イマイチな日がある。常に緊張感を伴う感じが好きだ。

干し野菜のきんぴら

おべんとう作りを続けるコツは、朝の準備時間を出来るだけ減らして、最低限の調理だけに絞ることだと思う。試しに、初回のおべんとう作りの時、前日の準備なしで当日全ての作業をやってみたら、一番時間がかかったのが野菜を切ることだった。これまでの寒くて乾燥した時期に編み出した方策が、干し野菜。ピーラーでささがきにして、ざるに載せて室内で放置する。日光に当てるのが理想的だが、夜の帰宅後ではそうもいかないから半日室内干しして、翌朝調理する。蒸し暑くなるこれからの時期は、それも出来なくなるだろうから、次の方策を考えないと。

魚のおかずが一番楽

どんどん減っている魚の消費量。そういう情報に接しては嘆きつつも、自分も魚は外食のみという状態が続いていて、劣等感でもあった。それがおべんとうを始めたら… 何て使い勝手がいいんでしょう! 夜ごはんではちょっと物足りなかった魚が、お昼のおかずとしてはもたれなくてちょうどいい。切り身は調理も楽で、特に漬けてある切り身は、オーブントースターでホイル焼きもできる。肉と違って、魚は冷めても脂が浮いて固まることもなく、食べる時も快適。寒い時期に重宝したのは、前日に作り置きができる帆立や牡蠣の時雨煮で、特にボイルした帆立は本当に楽チンだった。寝る前に煮て朝まで放置、味が滲みて美味しくなった。これからの時期はそれもできないが…。

お取り寄せも利用している。この日は、気仙沼・斉吉さんの惜しい!金のサンマ。

ガスコンロオペレーションと、野菜のオイル蒸し

おかずの作り置きという手もあるが、わたしは作り置きを作る時間を見つけられず、朝すべてのおかずを作っている。(その代わり、夜ごはんは外食だったり、買ってきたり、おべんとうのおかずの残りだったりする。)結果、重要なのがガスコンロと鍋のオペレーションだ。ごはんも鍋で炊いているので、これは本当に切実である。これもパターン化すると比較的楽である。

右コンロ:ごはん (Staub de Gohan) → 野菜のオイル蒸し (Fisler)

左コンロ(すべてフライパン):玉子焼→魚か肉→きんぴら

左コンロで焼き物に集中している間、お助けなのが野菜のオイル蒸し。無水調理ができる鍋に野菜を入れ、塩を振って、菜種油をかけて火にかけるだけ。注意点は、葉野菜はおべんとう箱に詰めた後、水分が出やすいこと。今の季節はキャベツが便利。

肉のおかずが難しい

意外だったのだが、おべんとうの肉のおかずが難しくて作れない。それは、曲げわっぱが電子レンジにかけられないためなのだが、冷めても美味しい肉のおかずというのが思い浮かばないのだ。熱々の鶏モモや、豚と野菜の炒め物など、肉のおかずは大好きなのだが、鶏モモのカリッとした皮は果たして冷めても美味しいのか? 肉汁たっぷりの豚炒めはめっちゃ美味しいが、冷めたら脂の白い塊たっぷりで食欲が失せるのでは?と不安で手が出せない。これも、金垣智香子さんに「おべんとうのお肉のおかずの講座をやってほしい!」とお願いして、先月教えていただいた。おそらく鶏中心になると思うが、徐々に増やしていきたいと思っている。

初・鶏モモおかずはコリアンダーチキン。スパイス講座の翌日だったので、塩胡椒とコリアンダーパウダーをまぶして焼いてみた。

おべんとうの詰め方

好きなおべんとうの本があって、まだ曲げわっぱを持っていなかった時から時々眺めては「こういうおべんとうを作りたいなぁ」と思っていた。(曲げわっぱと常備菜で、美味しさぎっしり、おべんとう。)この本で学んだ最大のポイントが、詰め方である。最初に詰めるもの(例:ごはん)で斜面を作り、おかずを順に斜面に立てかけるように詰めていくというもの。

自分なりに解釈して言うなら、「二次元ではなく、三次元で詰める」「柔らかいおかずのクッション機能を利用する」ということだろうか。

仕切りカップを使わない場合、おかずが動かないように固定する必要があり、いかに隙間なく、味が干渉しないように(あるいは多少混じっても美味しく食べられるように)詰められるかがポイントだ。魚や鶏など形が変わらない硬いおかずと、玉子焼や野菜など柔らかいおかずの組み合わせで、蓋を閉めた時に具材がピチッと固定されるのが理想的。

食べ物の盛り付けは高さを出した方が美味しそうに見えるので、その意味でも「斜面を作って、おかずを順に斜面に立てかけるように詰める」のは効果的だと思う。

と言うのは簡単だが、今年作った30個のおべんとうの写真を振り返ってみたら、まぁ盛り付け方の不揃いというか方向が定まらないというか。今年の目標はおべんとう100本ノック。経験の数がものを言うので、とにかく作り続けようと思う。

おべんとう作りのモチベーションは?

昨年の秋、「おべんとう展」に行った。普通の人たちの、普通のおべんとうの写真がたくさん並んでいた。「インスタ映え」とは真逆のおべんとうと写真で、嘘も見栄もない。じんわりと思いやりや愛みたいなものが浮かび上がってくる。展示会場の壁面に描かれていた、阿部了さん(全国各地の手作り弁当を取材して周っているカメラマン)の言葉が印象的だった。

お弁当っていうのは、自分の家の”素”のものを仕事の現場に持ってくること。ちょっと照れくさい部分が必ずどこかにあると思う。それを食べる瞬間に、ふと家に帰るというか”素”になる時間があるんじゃないかな。」阿部了さん(おべんとうの時間

わたしのおべんとう作りのモチベーションは、こんなところにある気がする。買ったおにぎりやパンでは決して得られないホッとした気持ち。不慣れながらも時間をやりくりして一生懸命作ったおべんとう。それは、自分で食べてもやはり美味しいと思うのだ。これまでの4ヶ月でおべんとう30個。今年中に100回作れるだろうか? 嘘も見栄もない「ケ」のおべんとうを作り続けたいと思う。

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