小泉武夫さんの「発酵は力なり」

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昨年夏、三陸・田老で縄文の発酵文化のお話を伺って以来、発酵の本を読むようになりました。それがきっかけで、天然酵母のパンづくりにも挑戦し始めましたが、発酵ってほんと難しいですね。(焼き上がったパンはとっても情けない感じ)

そんな話しを知らず知らずしていたのか、お世話になっている美容師さんが「はい、これ」と手渡してくれたのが、2002年発行のNHK人間講座テキスト「発酵は力なり」。「発酵」で検索すれば必ず名前が出て来る小泉武夫さんが講師です。

fermentation text fermentation text 2

納豆、鰹節、ヨーグルト、漬物、麹(酒、醤油、味噌、酢)、熟鮓(なれずし)…。菌の働きってほんとすごいなぁと思うし、生きている菌の作用っていまだによくわからないけど、世界各国で、そして日本の食文化の大きな柱のひとつなのでしょうね。

このテキストの中で一番印象に残ったのが「日本食再考」の章です。日本人が食の伝統を大事にしなくなった、スローフード、スローな文化が消えつつあるという、まぁ聞き慣れた論調なのですが、ちょっとショックだったのが自給率です。このテキストに掲載されている食糧自給率(カロリーベース、1999年)が40%。これまで「ふーん、そんなものか」と漠然と思っていましたが、もしも輸入が止まったら、必要なカロリーを摂取できるのは10人のうち4人だけ、という意味と知って怖くなりました。ちなみに、2011年の食糧自給率は39%。他の先進国はどうかというと、カナダ、オーストラリア、フランス、アメリカといった農業大国はそれぞれ258%, 205%, 129%, 127%。工業国であるドイツでも92%あります。

self sufficiency graph

13年前、小泉さんは「日本人は食べ物を作らなくなった」と言っています。家でごはんを作らなくなったということかと思ったのですが、それもあるのでしょうが、むしろ土の上で食糧を生産しなくなり、魚を獲らなくなったと語っていたのでした。足りなければ買えばいい。そうやって自給率が減り続けてきたのでしょう。

ちょうど去年の今頃、日本獣医生命科学大学の「食品科学」という授業に通っていました。ショックだったのが、「パンの消費がお米の消費を抜いた」「魚介類の消費量が一番多い世代は60代」「日本人の和食離れ、外国人の和食志向」「ユネスコで無形文化遺産になった和食が食べられるのは、いずれ料亭だけになる」というデータや予測でした。それ以来、わたしはお米を食べ、魚を食べ、国産のもの、できるだけ近い地域のものを家で料理して食べるようになったのですが、和食離れの傾向は大きなトレンドとして続いていくのでしょう。

food science text

とはいえ、最近ちょっと嬉しいのが、自分で農業をし始めた人が増えていること。武蔵野市で、三鷹市で、長野で、野菜を作って分けてくださる方がいます。とても嬉しいし、美味しいです。わたしは自分で作るところまでいっていませんが、杉並も野菜畑が多いところ、地産地消を心がけていきたいなと思っています。

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