コミュニティと、シェアする生き方

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シェアキッチンを使うようになって2年とちょっと、「シェア」についてよく考えるようになった。設備や道具、本などモノのシェアと、ノウハウやアイデアなど無形なもののシェア。ある時点での交換だけではなくて、シェアをしながら一定期間の活動をすることもある。

同時に、「コミュニティ」についても考えるようになった。わたしはいわゆる「コミュニティづくり」がやりたくて okatteにしおぎ(シェアキッチン)のメンバーになったわけではないけど、隔月で開催される「okatteオープンデー」に出店(ランチの企画と準備、調理、サーブ)するうちに、「あ、コミュニティってこういうことなのかな」と感じることが多くなった。

コミュニティって、つくるものじゃなくて育つもの?

okatteオープンデーは、当初はメンバーそれぞれが個別に出店していたんだけど、今ひとつしっくりこなかった。選ぶメニューによって売れる、売れないがはっきりして、例えばお昼時だからカレーみたいな炭水化物系をやれば売れるんだけど、食べる人のお腹も満たされるから他のメニューに影響が出る。それでいいじゃん、という考え方もあるけれど、okatteにしおぎではそういうのちょっと違うなぁと思っていた。そのうち、長期で体調が悪い時期があって、とても一人で出店できる状況じゃなかった時、ドイツメニューを出そうとしている人たちが誘ってくれて、グループでドイツプレートを出すことに。それがとても楽しくて、シェアキッチンで出すランチってこういうことだなと思うようになり、以来出店するときはグループに参加する形にしている。

201705 okatte open day

5月に行われた「okatte 春のパン祭り」はかなり意欲的な企画で、当日のキッチン(調理)も販売も大忙しで、この時にわたしは飲食店のオペレーションの入り口みたいなものを学んだ気がする。メニューはハンバーガープレートと、BLTプレート。パンを起点にメニューを考え、試作を繰り返してオペレーションを決める。

グループで試作を繰り返し、ハンバーガーのパンは天然酵母のごまバンズ、ハンバーグは北上四匠豚100%の生ハンバーグを塩胡椒で、その下に焦がし玉ねぎ、上にはきんぴらとごまをトッピング、彩りに絹さやを添えることで決定。プレートでは、有機野菜のピクルスとミネストローネと一緒にサーブ。

201705 hamburger plate

苦戦したのはBLTプレートで、生のトマトが入ってすぐ水っぽくなってしまうから作り置きができない。でもとてもオーダー入ってから挟むのは無理。そこで出てきたアイデアが、BLTの材料でオープンプレートにしてしまおう、というもの。天然酵母のカンパーニュ、北上四匠豚の厚切りベーコンと焼きトマト、有機レタスとルッコラのサラダ。有機野菜のミネストローネも一緒に。これならあらかじめ作っておける部分が多く、オーダーからサーブまでさほどお客さまを待たせないですむ。

201705 BLT plate

レシピが決まると、それを作業工程に分解する。前日の買い出しから当日の終了まで、縦に時間軸をとって、横にメンバー名が記載され、誰が、どこで(例:どのガスコンロで)、どの道具(例:お鍋やフライパンやオーブントースター)で何をする、と。こういうやり方を教えてくれたのもokatteのメンバーで、彼女は毎日小学校で給食調理のスーパーバイズをしているからやり方がよくわかっていた。そういう準備をしてはじめて当日のオペレーションがスムーズになり、それがお客さまが喜んでくれることに繋がるんだと実感した。

わたしがこれまでの okatteオープンデー活動を通して感じたのは、一人ではとてもこういうことはできなくてチームだからこそできるのと、そういうチームになっていくにはそれなりの時間や経緯が必要で、そこには個々人の努力とかコミットメントとが多かれ少なかれあって、こういうのをコミュニティと呼ぶのかな、と思ったのだ。今改めて振り返ると、コミュニティは人の集まりが育って形成されるもので、「コミュニティづくり」ってちょっと違うんじゃないかなと思う。あるいは、形成される中長期の過程をデザインするということなのかな。

201706 okatte uchiage
okatte 春のパン祭りの打ち上げ!

シェアをしながら生きる

さて、「シェア」について。

もともと、どうやったらモノが寿命を全うできるだろう?と考えるのが好きだ。昨年秋、仕事上の変化があって色々モノを手放さざるをえなくなった。色々探し回って苦労して手に入れたモノばかりだったので、廃品回収もリサイクルショップも気が進まなかった。モノが単に「中古品」や「廃品」としてしか扱わかれないからだろう。結局、周りの人たちでモノを使ってくれそうな人たちに声をかけ、「使う」と言ってくれた人たちに引き取られていった。

とても気分が良くて、こういうのをシェアする経済というのかなと思って調べてみたら、経済はお金を介在するものに限られるらしく、わたしがやったことは経済ではないらしい。シェアリング・エコノミーが注目されているのは、デジタルプラットフォームを駆使して、企業体ではなく個人が資産や時間を活用してビジネスができる側面が支持されているからだと思うが、基本的にはお金を介在した価値の交換だ。

シェアリング・エコノミーも、結局は資本主義の個人参画バージョンでしかないのかな?としっくりこないものを感じていたら、先日素敵な話に出会った。Airbnbファウンダー、Joe GebbiaのTEDスピーチで、彼が明言しているのは、「シェアリング・エコノミーは商取引ではあるけれど、目指したのは人と人の繋がりと共存する商取引。Airbnbは、拡大するにつれて設立当初の趣旨とは違う方向に進んでいっている部分もあるけど、そもそものはじまりは人の繋がりを介した価値の交換を目指していたと知ってちょっと嬉しくなった。(ちなみに、Airbnbは Air Bed & Breakfastではなくて、Airbed & Breakfastだった。偶然知り合って泊まるところがなかった人を、自宅のリビングでエアーベッドに泊めたことが始まり。)

「シェアをしながら生きる」とは、自分の持っている有形・無形のものを、自分のためだけではなくて、他者のためにも役立てていこうとする生活の仕方なのだろう。自分がそういう生活スタイルを心がけても、なかなかインパクトを持つまでには至らない。「こうなったらいいな」「こういうことしたいな」という希望やビジョンを共有する人たちとのグループで活動すると、少し規模の大きいことができて、一定の数の人にインパクトをもたらすことができる。(ここでインパクトと呼んでいるのは、自分の拠出したものや活動が他者の役に立ったり、幸せにしたりすること。)「okatte パン祭り」がお客さんたちに喜んでもらえたのは、メンバーがそれぞれ得意分野を持ち寄って、それがチームとして機能したからだと思う。

今は、有形・無形の資源の組み合わせによって、価値を生み出す人の繋がりにとても興味がある。そういうものを「コミュニティ」と呼ぶかどうかわからないけど、シェアをする生き方と、共感をベースにしたコミュニティについて深掘りしていきたいし、大事に育てていきたいと思っている。

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