「焼帆立グラタン」に思うこと

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冬の三陸に向かったのは、岩手県山田町(宮古と釜石の間に位置しています)の木村商店さんを訪問するためでした。さば節、日高昆布と干するめを使った天然だしが特徴で、無添加・無着色・手作りの押し寿司、炊込みごはんの素、いかめしなど、だしを生かした商品づくりを行っています。

その木村商店が手掛けた、焼帆立グラタン。三陸帆立、田野畑の牛乳、小岩井のチーズなど、地元岩手のこだわりの食材をふんだんに使っています。得意のだしを使っているわけではないのに、これまでの和風味付けと同様、とてもやさしい味に仕上がっています。牛乳、チーズ、バターが美味しいからでしょう、とても濃厚です。

scallop gratin

昨年初夏、初めて社長の木村トシさんにお会いしました。松庵のお店を訪ねてくださったのです。そのときに、帆立グラタンを含む商品ラインナップを紹介していただいたのですが、グラタンについてはちょっと難しいかなーと思っていました。東京で似た商品はすぐ手に入るし、容器が魅力的ではなかった。でも、とても美味しいからと伺って、その日の夜食べてみたら、ほんとうに濃厚でやさしい味でびっくりしました。

何とかこの商品を、看板にできないかとわたしも意見を述べさせていただきました。これだけ美味しいなら、パッケージを魅力的にすればもっとお客さまが手に取ってくれる。電子レンジで温めるだけではなく、オーブントースターで最後に焦げ目をつけられたほうがいい、などなど。夏、山田町の同社を訪問したとき、改良した試作品を見せていただきました。そのときはアルミの容器だった。そしてさらに改良を重ねて、できあがったのが現在の焼帆立グラタンです。和洋折衷の雰囲気の紙容器は、電子レンジ、オーブントースターのどちらにも対応できます。

今回訪問してあらためて感じたのですが、天然だしを使った商品を得意としている同社が、新しい分野に挑戦するのはとても勇気がいることだったと思います。社長のトシさんをはじめ、商品を開発している方たちは、わたしよりも年齢が上の方たちですから、洋食より和食のほうがはるかに得意でしょうし。でも、前に進むためには、こうやって新しいことに取り組んでいくことが必要なんだな、と思い起こさせられました。

さて、北の玉手箱に新商品が入荷すると、商品パッケージや調理した写真を自分で撮影することがほとんどです。でも、この焼帆立グラタンはなかなかうまく撮れない。グラタンって色味がないし、表面はのっぺりしているし、紙の容器は焦げを取ることもできないし、撮影はほんと難しかったのです。こんなに美味しいものを、あまり美味しそうに見えない写真しか撮れないのでは申し訳ない… 。苦肉の策で、ワンプレートランチのようなしつらえにしました。実際、この商品をイートインでお出しするなら、サラダ、パン、スープと組み合わせるのがいいと思うんです。

既に出来上がっている美味しい商品を入荷するのが常ですが、今回のように、商品化というかリニューアルに部分的にでも関わったことは、わたしにとってもとても意味がありました。子どもとまではいきませんが、姪っ子みたいな存在です。皆さんに愛される子にすくすく育っていってほしいと願っています。