東京の杉と共存するキッチン

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今から20年ほど前、突然花粉症になった。戦後、東京西部に大量に植林された杉が数十年経って十分育ったのに、その間に建材は輸入木材に取って代わられ、伐採されずに放って置かれた杉が大量の花粉を撒き散らしているというのは有名な話。わたしも2月中旬からGW前までは、1. 窓を開けない、2. 洗濯物は室内干し、3. コートは表面がツルツルのダウン、4. アレルギー薬と目薬必携、という制約の中で暮らしている。

そんな訳で、杉は好きではなかったのだけど、お友達が取り組んでいる「Small Wood Tokyo」の活動に出会ってからは杉のイメージが変わっていった。

花粉対策のため、東京都は予算をかけて杉を伐採しているが、その杉をどう使っていくか。Small Wood Tokyoは、建材屋さん向けではなく、わたしたちのような普通の人が扱えるコンパクトな家具や建具を商品化している。自分で敷けるフローリング材や、そのフローリング材を活用した自分で組み立てる棚が主力商品。

「もてもてキューブ」でレンジ周りを整理

もともと木製家具が好きなので、試しに「もてもてキューブ Book」にトライしてみた。フローリング用パネルの幅をそのまま生かした商品で、4面を組み立ててビスで止め、背面に支え板を2枚取り付ける。ドライバーさえあれば、すぐ組み立てられる。当初はベッドサイドにおける小さな本棚ということで入手したのだった。

motemote cube book

場所は変わって、うちのキッチン。レンジ周りが大変なことになっていた。調味料は引き出しにしまいこむと使いづらい。かといって外に出していると、どんどん増殖してすごいことになっていく。壁にラックを取り付けられればいいのだが、タイル貼りなのでそれもできない。ふと思い出して、もてもてキューブ Bookを置いたら… ぴったりとはまった。

 motemote cube in kitchen

この使い方は大ヒットで、以来レンジ周りはスッキリとしている。それで思いついて、もてもてキューブ Bookをスパイスラックにできないか?とSmall Wood Tokyoのお二人に相談して作ったのがこちら。棚の真ん中に中板を渡す。奥行きは、スパイス瓶や小さい缶が載る程度の浅めにする。(そうすると、手前に背の高い瓶なども置ける。)これも使い勝手がものすごく良くて、ほんと重宝している。

spice rack spice rack backside

こちらのサイズはフローリングパネル1枚分の奥行きだけど、もてもてキューブシリーズにはいろいろなサイズがあって、うちにはパネル3枚分の奥行きのものもある。こちらは、食料保存棚に使っているもの。

motemote cube

読みかけの本や、図書館で借りた本が乱雑にテーブルの上に載っている… なんてことはどこの家でも当たり前だと思うけど、それらをまとめてみたら… 気持ちよくスッキリした。

motemote cube

「敷くだけフローリング」

もてもてキューブは、Small Wood Tokyoの「敷くだけフローリング」のパネルを活用して生まれたもの。Small Wood Tokyoのオフィスにはよく寄らせてもらったが、「敷くだけフローリング」が敷き詰められた床は本当に気持ちがいい。杉やヒノキの無垢材で、夏は裸足でペタペタ歩き、冬もスリッパなどは不要で靴下だけで大丈夫、ほんのり暖かみがある。うちにも敷いてみようかな、と頭の隅でずっと考えていた。

というのは、ずっと「この床は嫌だ」と感じていたエリアがあったから…。それはキッチン。フローリング貼りなんだけど、ここは床暖房を入れていないから立っていると冷える。キッチンマットを敷いていたのだけど、あれはすぐずれるし、滑るし、大きくて厚いから値段も高いし。。。かといって敷いていないと、スリッパを履いていても冬は冷える。

kitchen - before

ここに「敷くだけフローリング」を敷けたらいいな、と思っていた。ちょうど、Small Wood Tokyoのオフィス移転に伴い、オフィスで使っていた床板の中古販売というのがあったので、これを機会に杉材で二畳分敷くことにした。ちなみに、「敷くだけフローリング」というのは、普通の床材(フローリングでもじゅうたんでも畳でも)の上に、釘など一切使わずに素手だけで敷けるというものです。

Small Wood Tokyoの知代さんと澪さんがうちに来てくれて、細かく採寸していった。たった二畳分なのに申し訳ないなぁと思いつつ、後日渡された設計図を見て納得。今回敷くのはキッチンカウンターの間だけど、微妙に冷蔵庫が出っ張っていたり、全面に敷き詰めるわけではないから端の処理をどうするかなど、きちんと見てもらわないといけない部分が結構あった。設計図に基づいて、サイズ別にカットされた板を持ち帰り、さっそく敷いてみる。板の側面には、突起と溝があるので、それを組み合わせながら、設計図に沿って敷いていく。

Layout drawing flooring panels

で、30分ぐらいで敷けてしまった。それも素手だけで。最後の列の板を、上から押し込んで「パチン」ときれいにはまった時はもう感動ものだった。長さの違う板を交互に配置してあるので、釘とか一切使わなくてもずれない。片方の端は、引き戸のレール部分なのできちんと嵌まるか少し不安だったのだけど、1ミリ程度の立ち上がりがしっかり支えてくれるのには驚いた。昔の木造建築は釘を使わないで木の組み合わせでしっかり支えあってるというけれど、木はすごいんだなぁ。

Laid out panels Laid out panels end of floor panels

杉は暖かい。今の時期、裸足でも全然大丈夫。無垢材なのでサラサラしている。梅雨の季節は湿気を吸ってくれるだろう。無垢材はシミができやすいが、場所柄、水滴がたくさん落ちるけど気にせず使っている。時間の経過が嫌味じゃない味になるのも、自然の素材のいいところ。

山形の庄内で学んだ、木と川と海が関わりあっている暮らし

インテリアに凝っているわけでもないのだが、図らずもこの2年弱ぐらいでうちのキッチンに東京の杉が増えていった。ふと、一昨年、山形・庄内を訪問したときのことを思い出す。鶴岡の博物館に、おびただしい数の「くりぬきもの」(大きな丸太をくりぬいて作った鉢など)や川船、海船が展示されている。庄内は、最上川とそれを囲む月山などの山を背負った形で日本海に面し、まさに山、川、海が共存している地域。山から木を切り出して「くりぬきもの」や船を作り、山の木の実や山菜、漁で獲る魚を食糧とし、木を伐る人、それで道具を作る人、その道具で食糧を獲る人・作る人の生が連なっていた。働くことが食べることであり、生きること。そういう時代の生活はものすごく大変だったろうし、寿命も短かっただろうけど、シンプルな生き方に憧れる気持ちがある。

Travel to Shonai

東京で育った木とともに暮らす。そんなライフスタイルがもう少し簡単にできるようになるといいなと思う。フローリングや棚はそうそう頻繁に買うものではないけれど、これから先、無垢材の床が欲しくなったり、ちょっとした棚が欲しくなったら、Small Wood Tokyo のこと、東京の杉とともに暮らすことを思い出してくれたら嬉しい。

Small Wood Tokyo 東京の森のこと http://smallwood.tokyo/forest/

Small Wood Tokyo 敷くだけフローリングやもてもてキューブなどの商品 http://smallwood.tokyo/item/

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