遠野、吉里吉里、山田

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花巻から遠野を抜けて釜石に至る道が好きです。なだらかな緑、秋には金色に光る田んぼ、風が気持ちいい。といっても冬季の山越えは難儀らしく、道が整った現在でも県央部と沿岸部は人の行き来がぐっと少なくなるそうです。

これまで常に素通りだった遠野に、今回は短時間だけど滞在することができました。自宅のある武蔵野市と遠野市が友好都市なので、「遠野物語」の話を聴く機会が時々あるのですが、研究者の赤坂憲雄さんによると「あれは格調高い文学作品としてではなく、ゴシップ週刊誌として読むとわかりやすい」そうで、そうやって読むとなるほどめちゃくちゃ面白い。オシラサマ(娘と馬が結婚し、怒った父親が馬を殺し、嘆き悲しんだ娘と馬が天に昇ってオシラサマという神様になった)とか、人間と馬が一緒に暮らしていた曲り家だからこそ生まれた伝承、信仰なんでしょうね。

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カッパ淵は、周りがかなり開けているのであまり怖い感じはしませんが、それでも夕方から夜は怖いだろうなぁ。この近くにある伝承館では、千体のオシラサマがある「オシラ堂」があって、参拝者が布きれに願をかけています。友人はここで気分が悪くなったそうで、数えきれないほどの祈りとか願いが狭い空間にぎっしり詰まっているのかもしれません。

遠野から釜石に抜けて、45号線を北上して大槌、吉里吉里へ。花巻、遠野と美しい田園風景が続いていましたが、沿岸部にでると景色ががらっと変わります。津波の警告看板が頻繁に現れ、低い土地は造成がすすみ、海に面した平地では防波堤工事が行われている。土木工事の風景が目立ち、海の生活のにおいが戻ってくるにはまだ相当の時間がかかるのだろうと思います。

海に面した吉里吉里も被害が大きかったところですが、2011年夏に漁師の奥さんたちがオープンした仮設食堂「よってったんせぇ」は、今も地元の人たちで賑わっていました。「マリンマザーズきりきり」というのが、漁師の奥さんたちの会社の名前ですが、わかめの加工品がとても美味しいです。特に、ぞうりのように大きいわかめかりんとうが絶品です。

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「よってったんせぇ」でわかめラーメンを食べたあと、45号線をさらに北上して山田町へ。ここには、「さんま押し寿司」「さば押し寿司」の木村商店があります。海沿いにあった加工場は津波で流され、今は15キロ内陸に移転して操業されています。社長の木村トシさん曰く、同じ山田町でも海沿いと内陸では温度も風も違うそうで、それは商品づくりにも影響を与えるから、現在の場所でがんばりつつ海に近いところに戻れるよう尽力されています。すべて手造りの木村商店、この日はさんまの昆布巻を作っていました。

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木村商店は女性中心。この日も、女性たちが加工を行っていました。 主観ですが、男性が経営する加工場と、女性が経営する加工場とでは考え方や雰囲気が違うようです。規模を大きくしていくための経営を行う男性経営者と、美味しい家庭の味をできるだけ多くの人が味わえるようにと考える女性経営者。ここでは、二日かけてだしを丁寧にとり、伝統のやさしい味付けで、丁寧に手造りして商品を出荷しています。

この日は宮古に泊まりました。いわて短角牛を使ったビーフシチューが絶品で、今も忘れられません。。。このあと、さらに北上して北三陸に向かいますが、それは次回に。