北の玉手箱と広報とわたし

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おととい、三鷹の合同会社++(たすたす)さんで、広報勉強会に参加しました。ひょんなきっかけで++の小田原澪さんとお知り合いになり、以来、++さんに遊びに伺ったり、okatteにお昼に来ていただいたり。あるとき、「教える、教えられるっていうセミナーじゃなくて、みんなが工夫・苦労している広報活動をそれぞれ共有しあう勉強会がやれたらいいね」という話になり、行動力溢れる澪さんがすぐ企画して勉強会の開催となったのです。

以前からの知り合いの方は皆ご存知ですが、わたしは元々会社員で、ここ20年ほどは広報畑一筋で、マスコミ対応や、広告つくったり、プロモーションイベントやったり、シンポジウム開催したり、もともとデジタル脳ではないけれど苦労してウェブサイトやソーシャルメディアに取り組んだりということをやってきました。とはいうものの、会社員をやめて食の世界に入ってからは(そもそもこれが相当無謀なのですが)、できるだけその過去を封印して「新しい人生を歩もう」みたいな感じで、「広報」とは距離を置いていました。

といっても、事業を始めれば広報は避けて通れない。四六時中広報活動を意識しているといっても過言ではありません。でも、自分では「これは本業の事を考えているのであって、元々わたしがやっていた広報の仕事とは違う」みたいに区切って考えていました。

でも、今回の広報勉強会を機会に、あらためて「広報」について考えてみました。

プロとアマチュア

プロがやる仕事と、アマチュアの仕事の違いってなんだろう? みんな驚くと思うけど、今の私はプロの仕事よりも、アマチュア(素人)の仕事のほうがパワーがあると思っています。

プロがつくるものはスマートでおしゃれだけど、どこか無機質。会社や商品やサービスのことは語っているけれど、それを話している人の顔が見えない。売込み上手だけど、なんか無責任っぽい。会社員のときは、ブランディング、ブランディングと口うるさく言っていたのに、今ではそれは「画一的」と同意語ではないかと感じています。プロにとって、広報の対象はいわば他人事であって、弱小企業や個人事業主の「ビジネスはわたし」とは立場が違う。プロが悪いというわけではないけれど、絶対的にそこが違う。きっとそういうことが理由なんだと思います。

事業主が自ら行う広報は、未熟だし泥臭いし人間っぽいし、なんといってもその人の「熱」みたいなものがムンムンしている。粗野だったりするけど、なんかすごくパワーがある。どんな事業であっても、結局はその人の「熱」みたいなものが事業そのものなんではないかな、と思うようになりました。

じゃあ、なんでもアマチュア(素人)がいいのかというと、事業をやる以上プロとしての矜持というのはあって、守らなければいけないラインがあると思う。例えば締切や時間だったり、品質(味)だったり。なんか、そういう「プロ」の部分と「素人の強さ」みたいな部分の両方が必要なんだろうな、と感じています。

デジタルとアナログ

北の玉手箱はオンラインショップ中心なので、ウェブサイトやFacebookページなどデジタルツールが不可欠です。もともとイメージしていたのは、すっきりして都会的でありながら、温かみのあるウェブサイト。でもやっていくうちに、アナログ感というか手作り感、手触り感を大事にしたいなと思うようになり、それをテクニカルに表現として追求するのではなく、中身を自分で作ろうと思うようになりました。それで、コピーライトや写真、お料理レシピなど「プロに頼まないといけないのかな?」と思っていた分野も含めて全部自分でやることにして、サイト上のレイアウトだけ月1度の更新をプロにお願いする形に落ち着きました。

昨年松庵でお店を開いていたときは、お店として体裁を整えないといけないし、でもお金はないし、で苦肉の策で黒板にお品書きを書いていました。これは結構楽しい作業で、毎月新しい商品が入荷するたびに書きかえるのですが、面白いもので書きかえると見る人も気づくようで、なんとなくお客さんの数が増えたように感じたものです。

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こういう文字通りの手作り感をもっと前面に出せないものだろうか? と悶々と考えているこの頃。広報勉強会にはイラストレーターのさかいみわさんも参加されていて、手書きの新聞「わたし新聞」について教えていただきました。最近あった出来事、考えていること、悩んでいること、そういうものをA4・一枚にどんどん書いていく。究極のアナログツールですが、これがとても面白くて読まずにはいられない。伺ってみると、「わたし新聞」は気が向いたときに発行するのではなく、リズムを作って定期的に発行することが大切。自分が前面に出る「わたし新聞」、発行するのはちょっと恥ずかしいけど、やってみようかな?と思っています。

(↓ さかいみわさんのわたし新聞)

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うちの商品は何だろう?  もしかして… わたし?!

広報勉強会の最後に、「今日の気づきと宣言」をそれぞれが発表しました。ワークシートに書いて発表するのですが、自分でもびっくりしたのですが、「うちの商品は何だろう?  わたし?」と書いていました。長年の広報担当のクセで、自分は黒子に徹して会社のこと、商品・サービスのこと、社長のことを必死にアピールするのが当たり前。北の玉手箱でも同じで、作り手の方たちや商品をアピールすることばかり考えてきました。でも、勉強会でみんなと話しているうちに、それはそうだけどもしかして「わたし」も商品なのかな?と思うようになりました。

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どの会社でも、広報を担当している人たちにありがちなのですが、会社や商品、いわば他人事のアピールは上手なのですが、本人のアピールはとても下手。他人事だとしゃあしゃあと壮大な文言でおっきなことを語るのですが、自分のことは全然話せない。わたしもそうです。とにかく自分のことを語る、見せるのが恥ずかしい。事業を始めたら、そんなことは言っていられないはずなのですが、やっぱりその壁を越えるのは難しい。

でも、自分が商品と考えたらどうだろう? 商品をアピールすることは慣れているはず。そう思ったら、少し壁を越えられる気がしました。

長年広報のプロとして働いてきた過去を封印してきたこの2年。でも今、あらためて広報について考えて、それが生活の中心に戻ってきたのはとても嬉しい出来事です。これからも、がんばって事業をやっている人たちとおたがいに学び合って、広報について考えていきたいと思っています。